神奈川県教育研究所連盟とは、神奈川県内の教育研究所などが連携して、調査研究等の進展を図っている組織です。
(神奈川県教育研究所連盟HP)

県内の教育研究所が研究成果を持ち寄って、年に一度研究発表大会を開いています。

今年度は、湘南地区(鎌倉、茅ヶ崎、寒川、藤沢)の教育研究所が事務局となって開催しました。

10月13日(金)<「生きる力」を育む神奈川の教育>を大会テーマに、県立総合教育センター善行庁舎を会場に行われました。

藤沢市教育文化センターからは、昨年度研究報告書や紀要を発行した

◇算数・数学科研究部会

◇教育実践臨床研究部会

◇防災と自然研究部会

より、3つの研究部会が研究の成果を発表しました。


<全体会・記念講演>

講演テーマ:禅の修行と学び
講師:臨済宗円覚寺派浄智寺住職円覚寺教学部長 

   鎌倉市教育委員   朝比奈 惠温 氏

  

事務局である湘南地区を代表し、藤沢市教育委員会教育長の平岩多恵子氏より挨拶がありました。

 

 記念講演では、朝比奈先生から「禅の修行と学び」という演題で、ご講演いただきました。コツコツと続けていく切さや、それぞれ与えられた役割や立場で対応する際「なりきること」を意識して臨むことの大切さについてわかりやすくお話しいただきました。

 参加者からは、「禅の修行という視点から教育を語る…とても興味深くきくことができた。」「不易と流行の部分で、教育と通じるところがあると感じた」と日々の教育活動を考えるきっかけとなったという感想がありました。
 


<第3分科会>

算数・数学科研究部会より

  素朴な気づきを子ども自身が大切に感じられる授業づくり

  

 倉持 智敏 研究員(明治小)  中本 康博 元研究員(藤ヶ岡中) 

 「教師が子どもから出された『素朴な気づき』を受けとめ授業に生かしていくと、気づきの連鎖によって子どもたちの学びが深まっていく」と考え、授業研究を行いました。研究成果として『素朴な気づき』を引き出すための仕掛けを設定し『素朴な気づき』を問題解決に生かせるよう展開した授業の実践報告がなされました。子どもたち自身が、自分や友達の気づきを大切だと感じることができるまでに至ったか否かの検証については課題が残されましたが、参観者からは学ぶところが多かった等、多くの関心や共感を得ることができた研究発表となりました。

 

<第4分科会>

教育実践臨床研究部会より

 目の前の子どもと向き合う~小学校高学年社会科における教育実践臨床研究の実際~

佐藤 遼 元研究員(長後小) 海保 雄 研究員(鵠沼小)

  教育実践臨床研究部会では、「見えることからの授業の再構築」を研究テーマに掲げ、研究員各自が、日々の子どもとのかかわりの中から自分のねがいを明確にし、実施した授業の振り返り(授業リフレクション)をとおして、授業改善の手がかりを自分自身の授業の中から得ていくという研究を長期にわたって行っています。今回の発表では、2017年3月発刊の研究紀要『目の前の子どもと向き合う~教師として欠かせないもの~』より、小学校5年社会科「藤沢の謎の工場を調べよう!」と、6年社会科「歴史の見方を広げよう」の実践を詳しく紹介しました。既存の授業研究と臨床的アプローチの違い、子どもたちにとって社会科を楽しくするための教材研究や単元づくりの視点、ねがいの明確化と目の前の子どもと向き合って授業を行うことの大切さなど、授業者の実感のこもった熱いプレゼンは、多くの参加者の関心を集めることとなりました。活発な質疑が終わった後にも、質問や感想を寄せてくださる方まであり、私たちの研究が、日々の授業改善や教師の成長のみならず、教科教育に対しても十分に示唆に富むものであったことを再確認する機会にもなりました。

  


 <第12分科会>

防災と自然研究部会より

やってみよう!防災教育~地域の自然の中で生きていくために~

 

和田 盛孝 研究員(湘洋中)  中田智規  研究員(大越小)

 「自然災害は人が自然と関わるが為に起こるもの」「防災は自然を理解する中の一部」これらの考え方の下、「自分の住む地域の自然環境をよく知るとともに、自然災害の種類、規模、それによる影響などをより深く理解しておくことで、自然災害発生時に自ら状況を把握でき、自分の身を守ることができる」という方針で各研究員が授業実践を重ねました。今回は、災害発生時の状況や自分の行動を具体的にイメージする「防災巻」実践と、地域の自然体験から防災意識を育む「自然の中ですごい探検をしよう!」実践を具体的に紹介しました。

 また、自然体験ができる身近な場所として「自然と親しめる場所」。普段の授業の中に少しずつ取り入れることで、防災教育の実現を図る「学習に追加できる防災の視点」。地域に合った防災教育を行うための基礎資料として取った「防災アンケート」など、形だけにならない防災教育の実現に向けた方針を、作成した冊子を使って報告しました。

 協議では、同じ県内でも地域によって防災対策の重点(津波、土砂崩れ、川の氾濫など)が異なるため、その地域に合わせた防災教育が必要ということ、市内でも同様に課題が異なるため、学校ごとで課題を整理する必要があること、研究の成果をどのように広く周知・啓発していくかが課題であることなどが話題に上がりました。どの地域でもよりよい防災教育を喫緊の課題と考えており、今回の報告が、情報交流の良いきっかけになりました。