令和2年度 国語科研究部会 活動報告
第8回 研究部会
日 時:2021年3月4日(木)
場 所:リモート開催
内 容:・臼澤啓佑研究員 部内研究授業振り返り
・川添俊雄研究員 部内研究授業振り返り
・中澤明子研究員 部内研究授業振り返り
・加口美江研究員 部内部内授業振り返り
・今年度のまとめ・次年度に向けて
臼澤研究員部内授業振り返り 『たぬきの糸車』(小学1年 光村図書)
今回は「たぬきが冬の間に何をして過ごしていたのか?」を考えることを通して、糸車を回すことがいたずらか? 恩返しか?」について自分
なりの考えを持つという授業を行いました。
また、児童がたぬきの気持ちになって場面ごとに書いた「たぬき日記」の紹介があり、「場面の移り変わりの理解に有効」「授業の中で触れら
れていない場面まで気づいて書いている子がいた。」との報告がありました。
研究員からは、「児童の反応と考えの方向に寄り添った授業であったので、児童はたぬきが糸車を回した理由を “いたずら” “恩返し” “ただ
回したかった” と、多様な考えを持ち、意見を出し合えていた。」「今までやってきたこと(助詞、接続詞、擬態語等)が今回の学びに活かさ
れている。ラセン型に積み重ねて学んでいくことのスタートを見られて良かった。」「たぬき日記を見て、小1でもたぬき(他者)の目線で見る
ことができることに驚いた。」などの感想が寄せられました。
講師の青山先生からは「児童の反応に対応して授業を進め、積極的に言葉を発する児童を多く見ることができ、生き生きとした魅力的な授業に
なっていた。瞬間瞬間の発問が、児童の思考を引き出す発問になっていた。」と講評がありました。
川添研究員授業振り返り 『固有種が教えてくれること』 (小学5年 光村図書)
11月に行った部内研究授業を含む単元『固有種が教えてくれること』の全体の授業を振り返り、「説明文の “型”(「初めに自分の思い、中
に根拠や理由、最後に自分の一番伝えたいことを書く)を教え、文章を書かせる際には “初め” “中” “終わり” の文章構成を考えて作る『構
成メモ』を書かせると、文章の書き方が分かり、文章力をつけることができた。」「『構成メモ』をもとに、ペアで見合い、話し合い、より考え
を深めさせる活動を行ったところ、友達に指摘されて “中”の部分(資料から読みとれること)を考え直したり、教師にアドバイスを求めたりし
て、自分の主張をより考える児童が多くなった。」という報告がありました。
研究員からは「『構成メモ』の “中” の部分のボリュームがある。」「資料から考えられる自分の思いがしっかり述べられている。読み取っ
て終わりでなくきちんした説明文の読み取りを行った結果、このように “書く” ところまで結びついたのだと思う。」などの感想がありまし
た。
講師の青山先生からは「“読む” での学びが “書く” ことにつながっていく研究実践となった。教師は、児童が説明文を読解する中で形式を
身に付けさせ、書くことにつなげているところがよい。」と講評がありました。
中澤研究員授業振り返り 『短歌を味わう』 (中学2年 光村図書)
「文章を読んで理解したことや考えたことを自分の知識や経験と結びつけて自分の考えを広げたり深めたりする」ことを目標に、自校の校歌を
題材にした短歌の授業を実践しました。「1時間目は、4人グループで校歌の読解をし、全体で共有し、校歌の内容と自分の経験を結びつけて具
体的な場面につなげる活動、2・3時間目は創作の時間(五七五七七を作り、推敲とワークシート記入)、4時間目は完成した生徒作品を掲載し
たプリントを配付し、感想を聞き合う時間とした。生徒は言葉の選び方や音の整い方など、観点にそって鑑賞を行っていた。」と報告がありまし
た。
研究員からは「生徒にとって良い経験になったということが伝わってきた。」「校歌を使っての授業が良かったので、情景が浮かんでくる良い
短歌を生徒は作れたと思う。」「生徒の深まりの状況に応じて授業の流れ、指導の方法、作品完成のタイミングを変えているのが良かった。」
「ワークシートから、校歌のどの言葉に生徒が立ち止まったのか分かるのではないか。」などの感想がありました。
講師の青山先生からは「事象を語り共有し次に進んでいくと同時に、どのような方法をしたので言葉の力がついたのか、その後の生徒の作品等
から分析的な見方をしていくことが大切。生徒が校歌のどういう言葉に注目して、どんな風に言葉で表現するのを身に付けて行ったかの分析
をするべき。」と講評がありました。
加口研究員部内授業振り返り 『どうぶつの赤ちゃん』 (小学1年 光村図書)
単元目標の『事例を比べながら読む』が達成できるように、その手立てとして、比較対象である “ライオン” の文章と “しまうま” の文章
を2段組にし全体を一枚のプリントにしたものを用意しました。このプリントにより、児童は比較しやすくなり、自ら進んで比較していきまし
た。「本文の内容や構成を読み取ることへの難しさを感じ、一つ一つの言葉の意味を確認しながら丁寧に行うことが必要だと思い、問いの確認を
行う際は言葉の意味を全体で確認し、その問いに合った答えを探していくように、繰り返し確認した。ライオンの赤ちゃんのイラストを提示した
際に、本文とイラストを合わせて根拠にしてほしかったが、イラストの方に考えが引っ張られてしまった児童が多くいたので、今後は視覚的な情
報(挿絵)の取り扱いにも気をつけながら授業を行っていきたい。」と報告がありました。
研究員からは「段落を意識して音読させているので、構成を掴ませやすく、文章に着目する児童が多くいた。」「抽象的な語句について文中で
の意味を取り上げ確認していたので、説明的な文章でつまずきやすいところがカバーできていた。」と感想がありました。
講師の青山先生から「児童が積極的に発言し、たくさん言葉を発していた。“ようす” の意味を身近な例で確認していたのが良かった。児童
がそれを確認して発言できていた。その後の問いが、“ライオンの赤ちゃん” “しまうまの赤ちゃん” を対比していくために、ややもすると一問
一答のような問いになりがちである。」と講評がありました。
次年度に向けて
講師の青山先生から「子供たちが言葉で思考活動をしていくことを支えていく問い、子供の思考を引き出すような発問の吟味」についてお話い
ただきました。「表現のあり方が問いのあり方で変わる。表現していくとき、インプットしたものをアウトプットするときのイメージをもう一つ
膨らませながら問うと良い。」との助言がありました。研究テーマの『表現しながら』につなげていきたいと思います。
第5回 研究部会
日 時:2020年12月10日(木) 午後3時30分から
場 所:教育文化センター 中会議室
内 容:・中澤研究員授業実践報告
・加口研究員研究授業指導案検討
中澤研究員授業実践報告
単元名:短歌を味わう(中学2年 光村図書)
単元の中に校歌(五・七調)の読解を入れ、歌詞の現代語訳ではなく、歌詞から第一中学校の生徒へのメッセージを読み取るという流れの授業
を組み立てました。生徒たちは校歌を読み、作詞家の思いをグループで考え、ホワイトボードにまとめ発表しました。次に自分が気に入った連を
選び、歌詞の中の言葉を身近な経験・情景に結びつけて短歌に表現する活動に入りましたが、身近な経験・情景を思い浮かべるのが難しそうでし
た。次の時間に再度自分の生活や経験を思い出す時間をとってから、短歌を作ることにしました。
加口研究員研究授業指導案検討
単元名:くらべてよもう「どうぶつの赤ちゃん」 増井 光子 (小学校1年 光村図書)
「ライオンの赤ちゃん」と「しまうまの赤ちゃん」の説明の中から共通している言葉を探し、生まれたばかりのときの様子を比べながら読む
ことができるように授業を組み立てました。研究員から「読むことに慣れていない児童は、本文の中から言葉を探すことに時間がかかるのではな
いか。」、「2つの問いに対する答えの判別がつくために『ようす』という言葉が何を表すかをまず知ることが必要。」など児童が2種の赤ちゃ
んについての共通点・相違点に着目して読めるよう、多くの意見・アイデアが出されました。
講師の青山先生から「授業の終わり方はいろいろな形があってよい。授業の最後が『話し合い(共有する)』や『書くこと』とは限らない。深
い学びへとつながるよう余韻が残る授業を。」というアドバイスがありました。
第4回 研究部会
日 時:2020年11月26日(木)
場 所:藤沢市立湘南台小学校
内 容:・川添研究員研究授業並びに研究協議
・中澤研究員研究授業指導案検討
単元名:資料を用いた文章の効果を考え、それをいかして書こう(小学校5年)
「固有種が教えてくれること」 今泉 忠明
川添研究員は、教科書の本文にある2つのグラフを児童に提示し、資料から読みとれることを考えさせ、資料の効果・大切さを伝え合う授業を
展開しました。児童が資料を通して多くのことを読みとり、発表することで、学び合いが活発に行われました。
その後の研究協議では、研究員の先生方が授業中に見取った児童の様子を付箋に書き、説明や意見を加えながら模造紙に時系列に貼っていき、
授業の流れを振り返りました。その中で児童の理解の様子や授業展開のポイントなどを共有することができました。
次に、次回部内研究授業を行う中澤研究員の指導案検討を行いました。『短歌を味わう』の教材を発展させ、そこから第一中学校校歌(7・5
調)の歌詞を通して現代語訳に留まらず作者からのメッセージを読み取る授業を組み立てました。第一中学校の生徒として目指す姿は何かを考え
自分達のことを短歌にまとめてみようという単元の流れをつくりました。
講師の青山先生から 「“言葉で理解” の前にまず “言葉を理解” しておくことが不可欠だが、その際意味調べに終わってしまわず自分の言
葉に落とし込んでいけるようにすることが大切。そのために、言葉の意味を知りたいときは教師から伝えてしまうのではなく、必要に迫られたと
きに自ら調べることができる環境を整えておくとよい。」とアドバイスを頂きました。
第3回 研究部会
日 時:2020年10月12日(月) 午後3時30分から
場 所:教育文化センター 小会議室
内 容:・研究の方向性について
・部内授業指導案検討
11月に行われる川添研究員(湘南台小学校)の部内授業の指導案検討(題材名:「固有種が教えてくれること」/「グラフや表を用いて書こ
う」小5)を行いました。
この単元は「資料を用いた文章の効果を考え、それを生かして自分の考えが伝わるように意見文を書く」ことをねらいとしています。そこで本
時は、資料の読み取り方を知り、次に文章を書くために効果的資料選びができるようにすることを目指しました。資料を見て自分はどのように読みとれたか、また
この資料を使うことでどんな効果があるか、考えを伝え合うことを中心に授業を組み立てました。
それに対し研究員からは、「1時間で『資料の大切さ』と『グラフでは色々な見方ができること』の両方を学ばせるのは難しくはないか。」
「研究テーマの『表現しながらともに成長する』に重きをおいた授業となるのではないか。」「扱う資料が、目標に対し適切か。」等、意見が出
ました。
講師の青山先生からは、「子供たちが主張をもちながら読み取る経験を積むことの大切さ」「教師が子供たちの成長の度合いを見取り、先を見通して授業をつくる大切さ」についてご助言いただきました。
第2回 研究部会
日 時:2020年9月24日(木) 午後3時30分から
場 所:教育文化センター 小会議室
内 容:・研究テーマについて
・2月授業研究セミナー振り返り報告
研究テーマ『言葉で理解し、表現しながら、ともに成長する国語の授業』に添って研究報告書の方向性について話し合いました。始めに、講師の青山先生から、次のような研究報告書を目指して欲しいとアドバイスを頂きました。
・授業でねらっていたことに対してきちんとした振り返り(科学的な検証)が記されている。
・実践から教師の学びが読みとれ、研究部会の中で深められた研究の成果を広く藤沢市の先生方が活用できる研究報告書であって欲しい。
まずは、研究の内容に興味をもってもらえるように、研究テーマに添った自分の研究実践が一目でわかる『扉のページ』を、各研究員の実践報告のページごとに掲載することを検討しました。
次に、2月に授業研究セミナーを行った臼澤研究員から報告がありました。「立ち止まる瞬間・タイミングをこちらで用意・仕掛けていかなければ、子供たちは読み流してしまう。一旦 “ちょっと待てよ” と思わせることができれば、子供たちは考え・読み深めていくことができる。」と、授業後の気づきが述べられました。この報告から、研究テーマの中にある『言葉で理解』の手立てとして、“言葉に立ち止まらせるしかけ” をつくることは、読みを深める上で大切なことだと皆で再確認することができました。そしてここから、“国語を好きになる” “将来活用していこう” という『ともに成長する』にどのように繋げていくか、更に研究を進めていきます。
第1回 研究部会
日 時:2020年8月6日(木) 午後2時から
場 所:教育文化センター 小会議室
内 容 ・研究の進め方の確認
・研究テーマについて
・研究部会の予定
・2019年度研究報告の作成について
待ち望んでいた第1回目の研究部会をようやく開催することができました。新たに2名の研究員を迎え、合計5名の研究員で、研究3年目がスタートしました。研究テーマ「言葉で理解し、表現しながら、ともに成長する国語の授業」のもと授業実践を行い、さらに研究を深めていくことを確認しました。今年度も、講師の横浜国立大学教授 青山浩之先生より、ご指導・ご助言をいただきながら、研究を進めてまいります。