平成28年度 教育実践臨床研究部会・活動報告

  授業研究セミナーできた?できた??できた!!

    1月24日(火)5校時  中学校1年数学科:平面図形

          授業者 好川 大貴 先生  講師 慶應義塾大学教授 鹿毛 雅治 先生

 

 好川研究員は、今年度研究員2年目として「生徒がどんな方法でも答えを出すことができる」ということを大切に、1年生の数学の授業に取り組んできました。「できることが増えれば、理解しようとする意欲も自然とわいてくる。そうなれば、『この問題はどうやってやったらいいのか』と考える姿や、わかったときの嬉しそうな姿を見ることができると思った」からです。数学のおもしろさ、数学的に考えることの良さを味わってもらうためにも、「まずみんなができるための取り組みをしていこう」と考えたのです。

 この日の授業では、生徒がこれまでに学習した平行移動、回転移動、対称移動の3つを組み合わせて、図形を移動させるという課題に取り組みました。前時まで順調にできることを積み重ねてきた生徒の中には、思いがけず苦戦する様子も見られましたが、自然とできた生徒ができない生徒に教えるという、これまでに授業者が大切にしてきた生徒の姿を見ることができました。

          

    集団による授業リフレクションの場では、冒頭、好川研究員より「予想される生徒の反応を考えるのは難しい」と授業の印象が語られました。しかし、参加者と共に授業の中で起きていたことの丁寧な確かめが行えたことで、最後には「自分がこれくらいわかるんじゃないかなというところも、わかっていない部分が生徒にはあるんだということをすごく感じました。そこをきちんとやらないと、『できる!』は増えていかないと思いました。次回も当たり前のようにわかるでしょというのは、自分の当たり前であるということを自覚しながら授業をやっていきたい」という言葉を聞くことができました。

 

       

 

 

 

  授業研究セミナー登場人物に寄り添って自分の思いを巡らせよう

   12月7日(水)5校時  小学校6年国語科:風切るつばさ

          授業者 山本 泰輔 先生  講師 千葉県保健医療大学教授 井上 裕光 先生

 

  

 今年度、研究員3年目として国語科で授業実践研究に取り組んでいる山本研究員のねがいは、「登場人物の気持ちを読み取ったうえで、自分はどのように思ったのかを伝え合い、思いを巡らせてほしい」というものです。3学期の『海の命』の学習につなげるために、今回のセミナーでは投げ込み教材『風切るつばさ』で授業を行いました。

 

        

   集団による授業リフレクションの場では、参加者から授業の中での具体的な子どもの姿が多数出されたことで、山本研究員からは「自分の把握していないところで、子どもたちがいろいろと考えていたんだということに気づかされました」「メッセージを書くことが楽しくなってきていることがよくわかりました」という感想を聞くことができました。ねがいに基づいた授業の手ごたえはもちろん、次の授業へと、さらに3学期の『海の命』へとつながる手がかりもつかむことができたようでした。

                   

 

 授業研究セミナー仲間とともに物語を読む楽しさへ

   11月30日(水)5校時  小学校6年国語科:やまなし

    授業者 藤本 一郎 先生  講師 千葉県保健医療大学教授 井上 裕光 先生 

 

 研究員2年目の藤本研究員は「子どもたちが『やまなし』を読んで味わったことをお互いに伝え合い、自分と同じ考え、違う考えに触れることで、仲間とともに物語を読む楽しさを感じさせたい」とねがって、やまなしの絵本づくりに取り組んできました。

 

 この日公開した授業は、子どもたちが個々に描いた5月の場面の挿絵を見比べて、交流するというものです。子どもたちは「ここはどうしてそう描いたの?」「ここに○○と書いてあるから」とやりとりすることで、同じ文章を読んでも、思い描く互いのイメージに違いがあることに触れたり、自分には思いもよらなかったイメージに共感したりすることができたようでした。

 

 

          

 

   集団による授業リフレクションの場では、冒頭、藤本研究員は「こだわりをそんなにもっていなかったのかな」と授業の印象を語っていました。しかし、参加者と共に授業の中での子どもの姿を丁寧に確かめていくことができたことで、「こだわりをもっているんだな」と印象が大きく変化し、今後に向けての手応えも得られたようでした。

       

 授業研究セミナー藤沢の謎の工場を調べよう!  

   11月1日(火)5校時  小学校5年社会科:工業

    授業者 海保 雄 先生  講師 慶應義塾大学教授 鹿毛雅治 先生 

 研究員として2年目の海保研究員が取り組んでいる社会科の授業は、「藤沢の謎の工場を調べよう!」という投げかけから始まったものです。海保研究員は「普段、何気なく通ったり、見たりする工場を調べていく中で、『こんな凄い工場が近所にあったのか』『この部品がないと、この製品は作れないのか』と興味・関心を高めていきたい」と考えています。そして、「多くの工場で自動車部品をつくっていることに気づかせ、来週の工場見学に興味を持っていければ」というねがいを持って授業を行ってきました。

特に本時では、調べたことを話したくてうずうずしている子どもたちの姿を目の当たりにすることができました。また、授業の後半では、藤沢の工場の分布から見える特徴について子どもたちが、「川の近くに多い」「北の方に工場が多い」「工場がかたまっている」「大きい会社の近くに工場が多い」など、自分なりの考えを積極的に発言していました。

       

       

 集団による授業リフレクションの場では、海保研究員の授業の印象は「やりたいことはやれた」というものでした。ただ、調べてきたことを自慢し合うところをメインにしたため、工場の分布から見えてくることをもう少し広げていきたかったそうです。その後、参加者と共に授業の中での子どもたちの姿を丁寧に確かめていくことで、次の授業に向けてのアプローチを明確にすることができました。

 

夏の教育実践臨床研修講座

  教育実践臨床研究部会では、「見えることからの授業の再構築」を研究テーマに掲げ、研究員各自が、日々の子どもとのかかわりの中から自分のねがいを明確にし(授業デザイン)、実施した授業の振り返り(授業リフレクション)をとおして、授業改善の手がかりを自分自身の授業の中から得ていくという臨床的な研究を長期にわたって行っています。

 毎年夏には、そうした研究の蓄積から得られた知見(臨床の知)を多くの先生方と分かち合うために研修講座を実施しています。今年度は、“授業の本質”を見つめ直し、目の前の子どもと共に創る授業を考えていく機会として、6つの研修講座を企画しました。

 

 

2016年5月24日(火) 第2回 研究部会

 

 5月の研究部会では、今年度授業実践研究を行っている4名の研究員から経過報告がありました。

 目の前の子どもたちの様子と授業者のねがいがきちんと結びついているのか、授業で扱う教材と具体的な手立てとの関連はどうなのか、研究員OBや大学研究者も交えて、今後の取り組みの方向が検討されました。

 2016年4月21日(木) 第1回 研究部会

 新しい研究員2名が加わり、平成28年度の研究部会がスタートしました。部会のオリエンテーション、さらに今年度授業実践研究を行う 山本泰輔研究員(小6/国語科)、海保 雄研究員(小5/社会科)、藤本一郎研究員(小6/国語科)、好川大貴研究員(中1/数学科)から、「この1年間、どんなねがいをもって取り組んでいきたいか」所信表明がなされました。

 その後、夏休みまでの間に新しい研究員には、毎年授業リフレクションの方法の中からカード構造化法を体験してもらっています。それを3回行うことで、今後自分が追究していきたいことや授業の課題などがみえてきます。右側の写真は、カード構造化法の結果(考察済みのツリー図)です。

   ↓山﨑 智 研究員(中1理科「地震」)

   

   ↓須山 達也 研究員(小2国語「スイミー」)

  

 

 

 本時は、本文から登場人物(カララ)の気持ちを想像し、メッセージを書いて、交流するという流れでしたが、子どもたちの言いたい、書きたいという思いがあふれ出る授業となりました。